合同会社と株式会社の違い6選!設立費用やメリットもわかりやすく比較
合同会社と株式会社の違いは、設立費用や税金をはじめとしたいくつかの違いがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが良いのかは各々で異なります。だからこそ、会社設立を考えている方は「会社の種類はどうしたらいいだろう…….」と悩むのではないでしょうか。
日本では「株式会社」が最も多く、会社全体の約95%を占めると言われています。ただし、合同会社にもメリットがあるため、株式会社の数が多いからといって株式会社を選ぶことが必ずしも良いとは言えません。株式会社と合同会社で迷ったら、メリットやデメリットを比較して決めてみてはいかがでしょうか。
この記事では、会社を設立する上で参考になる合同会社と株式会社の違いやメリット・デメリットについて解説します。会社の種類を選ぶことが難しい場合はどうしたらいいのかもあわせてご紹介します。
ㅤ
目次
合同会社と株式会社の違いとは?
合同会社と株式会社は、どちらも法人格を持つ会社ではありますが、会社としての特徴が違います。設立する会社を選ぶ際は、そもそもの概要や特徴の違いを把握することが重要ではないでしょうか。また、メリットやデメリットを比較する上でもこれらの情報は大切です。
本章では、合同会社と株式会社の概要や特徴について説明します。
合同会社とは?
合同会社とは、会社の経営者と出資者が同じ会社形態のことです。
大きな特徴としては、
- 低資本で始められ、設立のハードルが低い
- 経営者が出資者で、意思決定がスピーディー
という2点が挙げられます。
今やAppleやGoogle、Amazonの日本法人など大手外資がこぞって合同会社に変更しています。というのも、上記の意思決定がスピーディーなためです。アメリカ本社にわざわざ意思決定を委ねていては、柔軟性にかけますから。また、個人から法人化する事業者の増加などを理由に、より法人化しやすいように設けられています。
合同会社は、2006年に設けられたまだまだ新しい会社形態です。アメリカのLLC(Limited Liability Company)という会社形態をベースにして作られました。
株式会社では、株主(出資者)と経営陣は基本的に異なります。一方で、合同会社は出資者と経営陣が基本的に同じであるため、出資している株主が経営陣を兼ねていると考えればわかりやすいでしょう。
合同会社は経営者が出資者を兼ねている他に、社員全員が有限責任社員であるという特徴があります。有限責任社員とは、自分の出資を限度として責任を負う社員のことです。会社に出資してるのが100万円であれば、負債が1億円あったとしても、責任の限度は100万円になります。
株式会社とは?
株式会社とは、株式を発行して出資してもらった資金で経営する会社です。日本では最も多い会社の種類で、みなさんも馴染みある言葉だと思います。
大きな特徴としては、
- 経営と出資者が分離している
- 出資を受けて事業を始められる
という2点です。
株式会社は経営と出資者(株主)が分離しているのが特徴です。市場で株式を買ったからといってその会社の経営陣になることはありません。合同会社が出資と経営が一体になっている点と比較してください。ただし、逆はあり得ます。経営者が株式を100%保有している場合も多く、実質的に株主と経営者が一体化しているのです。
株式会社は出資により資金を調達し、株主総会などを通じて意思決定します。株式会社という名前に「株式」と入っているように、株式や株主が会社の意思決定、運営、事業において鍵になる会社です。
合同会社と株式会社それぞれの概要と特徴をお伝えし、前提知識は把握できたかと思います。ここからは、それぞれのメリットとデメリットをより深く見ていきましょう。
合同会社と株式会社のメリット・デメリットを比較
なぜ株式会社のほうが数が多いのか?それぞれの概要だけでは、なかなか判断しにくいと思います。やはり業種や設立の目的、状況によってどちらが良いかは異なりますから。そこで判断基準となるのが、メリットとデメリットです。
「合同会社の大きなメリットは、初期費用?」はたまた、「株式会社は信用度なのか?」「税金のメリットは双方であるのか?」など、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
比較ポイントは、
- 設立費用はどれくらい違う?
- 税金の額は違うのか?
- 信用度は異なるのか?
- 資金調達のしやすさは?
- 経営の自由度・しやすさは?
- 企業規模拡大・上場を目指すなら?
という6点を比較します。
最後に、それぞれのメリットとデメリットのまとめも載せていますので、ぜひご覧ください。
1.設立費用は合同会社が安い
合同会社と株式会社の大きな違いの1つは、設立費用です。株式会社を設立するための費用相場は20~30万円前後が費用相場です。対して合同会社は6~15万円前後が設立時の費用相場になります。合同会社の方が、コストを抑えて設立できるメリットがあります。また、合同会社は定款の認証も不要なため、設立にかかる項目がそもそも少ないです。
詳しい設立費用 | 合同会社 | 株式会社 |
定款用収入印紙代 (電子定款の場合は不要。0円) |
4万円 | 4万円 |
公証人に払う手数料 (定款認証) |
0円 |
3~5万円 |
定款の謄本手数料 | 0円 | 1ページ:250円 |
登録免許税 | 6万円or資本金×0.7% 高い方 |
15万円or資本金×0.7% 高い方 |
合計 | 約6~15万円 |
約20~30万円 |
また初期の設立費用に加え、合同会社は設立後も手続き費用、つまりランニングコストを抑えられるメリットがあります。具体的には、株主総会(会場費用や弁当代等)や決算公告(約6万円)、役員登記(約1万円)などに必要な毎年かかる費用を削減できます。合同会社は経営と出資が一体になっているため、株式会社のような株主総会が必要ありません。また決算公告も不要です。そして株式会社では役員任期は最長10年ですが、合同会社では任期を定める必要がありません。
費用面で見ると、圧倒的に合同会社に利点があります。
2.税金は基本的に同じ
税金面では合同会社と株式会社ともに、法人税や法人住民税、法人事業税などが課税されます。これら法人税などはどちらも生じた利益から算出され、割合は同等です。また、課税売り上げが一定額以上の場合には、どちらの会社も消費税の納税義務が課されます。
しかし、どちらの法人も個人事業主と比較すると売上・利益が高いほど税金節税のメリットが大きいです。
【個人事業と比較した法人節税メリット】
- 所得が高いほど税金が安くなる
- 中小企業の軽減税率制度がある
- 家族や自身の給与を経費にできる
- 生命保険を経費にできる
- 経費にできる範囲が広い
- 赤字を9年繰り越せる
所得金額に関わらず、課税所得30%(比例課税)
3.信用度は株式会社が高い
4.資金調達は株式会社がしやすい
5.経営の自由度は合同会社が高い
6.企業規模拡大は株式会社がしやすい
合同会社と株式会社のメリット・デメリット比較【まとめ】
ここまで比較してきたメリットとデメリットをまとめました。
株式会社 | 合同会社 | |
メリット | 社会的な信用度が高い | 設立費用が安い |
資金調達しやすい | ランニングコストも安い | |
有限責任である | 経営の自由度が高い | |
規模拡大しやすい | 出資金額に関わらず対等な関係 | |
デメリット | 設立費用が合同会社より高い | 社会的な信用度が劣る |
ランニングコストも高い | 資金調達の方法が限られる | |
法令規定が多く、手間がかかる | 社員同士が対立する可能性 | |
赤字でも税金がかかる | 上場できない |
株式会社のメリット
- 社会的な信用度が高い
- 資金調達しやすい
- 有限責任である
株式会社は社会的な信用度が高いというメリットがあります。信頼度が高いということは資金調達や取引において有利に働く可能性があります。
株式会社は株式を通して出資します。株式に出資した限度でしか責任を負わないというメリットがあります。
【合同会社のメリット】
・設立時のコストが安い
・費用を節約できる
・自由度が高い
・設立時の定款認証が不要
合同会社は利益配分などにおいても自由度が高く、意思決定も迅速な傾向にあります。
合同会社と株式会社のデメリットを比較
株式会社と合同会社には次のようなデメリットがあります。
【株式会社のデメリット】
・設立時に費用がかかる
・役員や決算公告の費用がかかる
・税金や保険の手続きが煩雑である
・赤字でも税金がかかる
株式会社を設立するときの費用相場は合同会社より高額になりがちです。
すでにお話ししましたが、合同会社を設立する際の費用相場は11万円前後ですが、株式会社を設立するための費用相場は25~30万円前後となっており、合同会社の設立よりも費用がかかることを覚悟しなければいけません。株式会社は赤字でも法人住民税の均等割り分がかかるなど、税金という点でも負担があります。
役員の再任登記や決算公告などにも費用がかかるため、総じて合同会社よりも株式会社の方が設立や事業にお金がかかると考えた方がいいでしょう。
税金や健康保険など、諸手続きが煩雑なところも株式会社のデメリットになります。
【合同会社のデメリット】
・信用度や知名度が株式会社より低い
・資金の調達が難しい
・上場できない
・人間関係による経営に影響が出やすい
合同会社のデメリットは知名度や信用度が株式会社に一歩譲る点です。会社の種類の知名度や信頼度は融資や取引などにも影響する可能性があります。結果、融資による資金調達がやや不利になる傾向にあります。また、合同会社は株式会社ではありませんから、株式発行による資金調達もできず、上場もできません。
合同会社は経営と出資が一体化しているため迅速な意思決定ができる反面、人間関係による影響が出やすいというデメリットもあります。
たとえば仲の良い友人2人と合同会社を設立したとします。はじめは仲良く仕事をしていましたが、友人2人の関係に深刻な亀裂が生じてしまいました。このようなケースでは個人的な感情や関係性が会社に悪影響を及ぼすことが考えられます。
合同会社が向いている人・業種は?
合同会社に向いているのは小規模でできる会社です。小売業やIT関連など少人数でできる業種が合同会社向きになっています。また、合同会社が向いている人は、仲間内など少人数で会社をやりたい人や、自由度の高い経営をしたい人などです。
費用と税金を併せて節約したい人にも合同会社が向いています。
個人事業主が法人化することにより税金負担を軽減できるメリットがあります。会社の種類として合同会社を選ぶことにより、個人事業主は税金負担の軽減だけでなく設立時の費用負担も軽減可能です。
株式会社が向いている人・業種は?
株式会社に向いているのは将来的に会社を大きくしたい場合や、多くの人数を必要とする業種などです。また、会社設立後に資金調達を必要とする場合や積極的に出資を募りたい場合などは株式会社が向いています。
また、仲間内など少人数での仕事は避けたいという人も株式会社向きです。仲間内など少人数で仕事をしてしまうと、どうしても仲違いのリスクがあります。合同会社を経営している仲間同士が個人的な事情から関係性に亀裂が生じてしまうと、経営にも不都合が生じてしまうことでしょう。
個人的な事情に影響されず、経営と出資を明確に分離したい人は株式会社向きです。
合同会社と株式会社で迷ったら?
合同会社と株式会社のどちらが向いているかは、「将来的に会社をどのように経営したいか」「会社の成長や資金調達についてどう考えているか」「どの業種で法人化するのか」「費用や税金、諸手続きについてどう考えているか」などによって変わってきます。株式会社は信用度が高いから良い、合同会社は設立費用を節約しやすいから良い、という単純な問題ではありません。
合同会社と株式会社どちらを選ぶべきか迷っているなら、専門家に相談してはいかがでしょう。
疑問点や迷っているポイントをさらに明確にし、専門家に相談しながら会社の種類を検討すれば、よりニーズに合った会社の種類が見えてくるかもしれません。迷ったときは司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
株式会社と合同会社には違いがあります。メリットとデメリットも異なるため、会社を設立する際は特徴やメリット、デメリットなどをよく比較して決める必要があります。ただ、いざ比較して決めようとしても、会社の将来的なことや業種も含めて選ぶことは、なかなか難しいことではないでしょうか。
株式会社と合同会社で迷ったら、司法書士などの専門家にも相談して決めることをおすすめします。専門的な第三者視点でのアドバイスを受け、設立する会社選びの参考にしてはいかがでしょう。